明日、戦争があるとすれば

イズヴェスチヤ、2003年7月31日

■朝鮮半島からの核の雲は、2〜3時間後には、ウラジオストクを含む沿海地方を覆い得る。

 北朝鮮と米国及びその同盟国である韓国間の核紛争に対するロシアの最良の回答となり得るのは、太平洋艦隊の戦力が遂行する北朝鮮の核施設に対する予防打撃である。というのも、北朝鮮がソウルに対して核打撃を加えれば、放射線の雲は、数時間後には、沿海地方とハバロフスク地方を覆う。それ故、予防攻撃によってのみ、ロシア極東の放射線汚染を避けることができると、ロシアの若干の高位軍人は考えており、この際、彼らの意見が特に非公式であり、理論上ものであると協調している。公式レベルにおいて、国の指導部は、現在のところ、朝鮮半島の状況が非常に危険な方向に発展しているとだけ認めている。当紙は、極東の住民及び当局がこれにどの程度備えているのかを明らかにしようと試みた。

■火の海による報復

 水曜日、ワシントンにおいて、米国が核プログラムを巡る危機の解決に関して北朝鮮に新しい提案を準備したと公表された。具体的にいかなるものかは伝えられていない。1つだけ明確に言えることは、ホワイトハウスが、5カ国(北朝鮮、米国、中国、韓国及び日本)又は6カ国(ロシアを「加えて)形態で交渉を行う意図を否定する意図はないことである。第2案の優先性については、今週、国務省公式代表リチャード・バウチャーが表明した。この提案が、既に数ヶ月間アメリカとの二国間交渉を要求している金正日にとって説得力があるのかは、疑問のままである。多国間対話を組織する過去の全ての試みは、失敗に終わっている。

 水曜日、日本のテレビ会社NHKのインタビューにおいて、米国務次官補リチャード・アーミテージが認めたように、「北京の仲介の努力は、現在のところ、具体的な成果を出していない」、「交渉開始の明確な展望は、検討されていない」以上なおさらである。「我々は、北朝鮮に侵入する意図を有していないと既に表明した」と、アーミテージは語った。「我々は、単に朝鮮半島を非核化を得たいだけである」。

 だが、これには、大きな問題がある。先週、東京とIAEA本部庁舎があるウィーン筋から、北朝鮮が建国記念日にあわせて、9月9日に核保有国として公式宣言するという情報が現れた。これが単なる威嚇ではない最初の徴候が、既に現れている。「ニューヨーク・タイムス」は、北朝鮮で2つ目の兵器用プルトニウム生産複合体が建設されたと報道した。その後、平壌は、保有する全ての核燃料の濃縮に成功し、核兵器の開発に近づいたと表明した。今まで、北朝鮮の核弾頭保有のいかなる公式確認がないにも拘らず、北朝鮮は、「合衆国のいかなる挑戦」にも、「火の海」で報復すると確約している。ロシアは、この火を独自に迎えることになる。というのも、予想される核紛争は、ロシア国境直近で燃え上がり得るからである。

■全員を隠すことは不可能

 ちょうどこの時、ハバロフスクにおいて、極東の民間防衛及び非常事態問題に関する会議が行われている。当紙の情報によれば、非常事態省の7人の次官が参加した会議は、特に朝鮮半島での核戦争の場合、行動計画を同官庁の地域部署の長にまで伝達するために行われている。沿海地方の全関係機関は、予想される被害を算定する課題を既に受領した。これに繋がる最初のものの1つは、気象であった。

 「朝鮮半島での核爆発の場合、放射線の雲の沿海地方進出の可能性は、約70%に達する。これは、爆発の2〜3時間後には、ウラジオストクを含む沿海地方南部を覆い得る」と、沿海地方気象センター局長ボリス・クバイが当紙に伝えた。「多くは、いつ、特にどこで、爆発が起こるかにかかっている。冬には、地域において北及び北西の風が優勢となるため、危険性は低い。夏と秋には、主として、朝鮮を経由して沿海地方に流れる南西の風が吹く。我が局は、雲がどこへ、いかなる速度で移動し、拡散地帯がどうなるか、何れかの居住区での放射線レベルがどの程度なのかを正確に見積もる準備をしている。我が作戦グループは、民間防衛・非常事態局との協力により、当該見積に関する定期訓練を行っている」。

 沿海地方行政府は、最近、現地防空壕の調査に関する作業を急激に強化した。

 「防空壕を100%全て準備されているとは言えない」と、数日前、沿海地方知事セルゲイ・ダリキンが表明した。「15年間、誰もそれに従事していなかった。多くの者は、戦時、隠れられる場所が全て存在しているはずだと考えている。しかし、しかし、全員が隠れるためには、もう1つのウラジオストクを地下に建設しなければならない。これは不可能である。今、我々の課題は、今日存在するものを予想される「事態」に適応することである」。

■放置された墓地

 「今日存在するもの」には、問題がある。そう、人々は、ガスマスクを求めていない。しかし、売り場でもそれは見つからない。そう、住民中の不安だけが唯一認められている(つまり、例えば、ある年金受給者は、その地区の防空壕の思わしくない状態について、地方行政府に書面で伝えた。沿海地方行政府で民間防衛・非常事態方面を監督する沿海地方副知事オレグ・メリニコフは、立ち寄って、警報を点検することを約束した。)。しかし、ウラジオストクの多くの住民は、一般に、防空壕がどこにあり、核戦争の場合どこへ逃げるべきなのかを知らない。

 「私は、この地区に12年間住んでいるけど、おかげさまで、この間、いかなる警報もありませんでいた。どこへ逃げるべきなのか?誰が知っているのですか!」と、別の年金受給者ニーナ・エフィモヴナは語っている。

 しかし、ニーナ・エフィモヴナが自分の隠れ場所を知っていたとしても、恐らく、彼女には役立たないはずである。そのいくつかのものは、商人にリースされ、自動車整備工場と倉庫に改築されている。そしてこれは、まだ最悪の事態ではない。防空壕の全生命保障システムを維持し、警報の場合、部屋を機動的に開放する義務を有する模範契約が、商人と締結されている。

 「この部屋を借りたとき、そこに入ることができなかった。ドアは、かろうじて開いた。至る所に、ゴミ、湿気があり、光がなかった、人々を助けるものではなく、ここに入るのは無理だった。今は、整頓され、清潔である。ここでは、私の全ての設備を1日、2日で見せることは、勿論、現実的ではない」と、防空壕の1つをレンタルしたアレクサンドルは語っている。

  商人が興味を示さなかった防空壕は、かなり前から不適合に至った。その建設のために、かつて、ウラジオストク要塞の地下迷宮が利用された。その入口は、丘の斜面に巧みに隠されている。1つは、地方行政府庁舎の比較的近くに位置する。探索に向かった当紙の通信員には、それを探す出すのは簡単だったが、密生した雑草のため、近づくのは容易ではなかった。ドアの外見は、あたかも10年間開かれたことがないようで、地面に埋もれていた。市の中心部に位置する別の防空壕の入口も、大きなゴミの山に埋もれている。数時間のブルドーザーでの作業後初めて、ドアに到達することができる。

  私は、市の中心部の防空壕を見学する試みを止め、ウラジオストク郊外に向かった。ヒョードロフ湾は、絶景の場所である。ここにも、地下墓地への鉄筋コンクリート製の入口が少なくない。市の中心部と異なり、これらは、完全に開かれていた。厚さ幅半メートルのコンクリート製の壁だが、既に崩壊している。照明は、勿論ない。ケーブルは取り払われ、スクラップ置き場に引き渡された公算が大きい。懐中電灯を付け、階段を下りる。壁には触れない。壁は、恐らく湿気で何かねばねばしていた。下に下りれば下りるほど、照明だけではなく、換気も復旧する必要があることが明らかになった。しかし、ここで、階段は、水中に延びている。これより下は、全て浸水している。

 既にソビエト時代に立案された計画によれば、非常事態の場合、ウラジオストクの半分は、他の地区に疎開するはずであり(つまり、例えば、 ロシア科学アカデミー極東支部は、計画により、地方北部のチュグエフスキー地区に移転する。)、市内には、その防衛及び生活活動の保障に必要な専門家だけが残るはずである。疎開のために、各企業の下で、移転の場合の職員の位置、その職務上の義務が指示された動員計画が立案された。召集、輸送、給食に対する責任者が指定された。防空壕内には、化学防護手段、食料及び水の備蓄、民間人受入用の寝台が存在しなければならない。これは何もない。今、当紙の情報によれば、市の防空壕の約50%は、その状態のため、使用することができない。公式に、防空壕の数とその準備度を知ることは、一般に不可能である。

 「民間防衛、防空壕及び住民救助に関する全情報は、秘密性を帯びる」と、副知事オレグ・メリニコフが当紙に表明した。

■先制打撃

 しかしながら、極東住民の安全の保障の最良の方法は、若干の軍人の意見によれば、北朝鮮の核戦力に対する予防打撃であろう。

 「アメリカ人も、我々も、この地域に良好な諜報を有している。北朝鮮が核兵器を搭載したミサイルの発射準備を始めるや否や、我々に明らかになる。この場合、 先制打撃を加える必要がある。アメリカ人がこれを行い、我々は、諜報データの提供に限定する方がベターである。しかし、我々には、更に完全に戦闘能力のある巡洋艦「ワリャーグ」が存在する。その巡航ミサイルは、発射準備の初期段階において、北朝鮮の発射装置を簡単に破壊する。 これによってのみ、ロシア極東だけではなく、北東アジア全体にとっても恐るべき核兵器の使用を確実に防止できる」と、太平洋艦隊本部高官が当紙に表明し、これが彼の個人的なもので、公式見解ではないと強調したが、それにも拘らず、数人の彼の同僚は同調している。情報筋は、その種の情報の流布が刑事処罰される犯罪であると指摘し、北朝鮮の核施設に対するロシアによる予防打撃の作戦計画が立案されているのかについて確認を拒否した。

 「艦隊は、計画体制で活動している。これが、私の言える全てである」と、要請に回答して、太平洋艦隊報道局長アレクサンドル・コソラポフが当表明に公式にコメントした。

 国防省報道局でも、当該計画の存在又は不在のコメントを拒否された。

 「軍は、状況のいかなる展開にも準備している」と、国防省報道局は当紙通信員ウラジーミル・デムチェンコに公式表明した。「ロシアの対応に関するいかなる決定も、国の政治指導部、最高司令官が採択しなければならない。そして、軍には、この決定を遂行するのに十分な手段がある 」。

 それにも拘らず、当紙の国防省筋は、朝鮮の発射装置破壊計画は、恐らく、実際に存在している上に、北朝鮮と合衆国間の関係先鋭化のはるか以前に立案されたものと考えている。ロシア領土の直近に核弾頭を搭載できるミサイル発射装置が存在すれば、 構想上、その破壊計画も存在するはずである。

 退役軍人には、この見積に対して、別の視点も存在する。

 「北朝鮮が核兵器の試験を行わない限り(これなしでは、量産できる弾頭の開発が不可能である。)、平壌側からの核の脅威について語ることは時期尚早である」と、2001年まで核戦力建設の作戦・戦略総括に従事する国防省第4科学研究所を指揮していたウラジーミル・ドヴォルキン少将が当紙通信員ドミトリー・リトフキンに表明した。「この理由により、私は、ロシア側からの予防打撃の可能性を完全に排除する。しかし、 米国が予防打撃を加えることは排除できない」。

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最終更新日:2004/03/19

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